モータードライバ TA7291P とは?
Arduinoのピンは非力で、モーターを直接回すだけの電流を流せません。そこで間に入るのがモータードライバで、Arduinoからの「こっち向きに、これくらいの速さで」という弱い信号を受けて、モーターに必要な電力を流してくれる中継役です。元記事は東芝の TA7291P を左右のモーター用に2つ使い、正転・反転・スピードを制御しています。
この回のヤマ場:ピン数がギリギリ足りない問題
ここが本当に面白いところ。Arduinoでモーターの速さを調整するには PWM(出力を細かく on/off してパワーを疑似的に絞る仕組み)が必要ですが、Arduino UNO で PWM が使えるのは ~ 印のついた D3, D5, D6, D9, D10, D11 の6本だけ。
ところが第3回で載せた USB Host Shield が D7〜D13 を占領してしまうので、残る PWM ピンは D3, D5, D6 の3本だけ。モーター2つを普通に(固定抵抗器ありの2ピン制御で)動かすと PWM が4本必要になり、3本では足りません。詰みです。
そこで著者さんは、TA7291P を「4・5・6番ピンの3本で制御する」方式に切り替えます。こうすると4番ピンのPWM 1本でスピード調整、5・6番は HIGH/LOW の組み合わせで正転・反転を指定するだけ(=ただのデジタルピンでOK)。結果、必要なのは PWM 2本+デジタル4本。使えるのは PWM が D3/D5/D6、デジタルが D0/D1/D2/D4——ちょうどギリギリ足ります。この「制約の中でパズルを解く」感じ、たまらないです。
キャタピラだから「その場回転」ができる
車体はLEGOのキャタピラ(無限軌道)。普通のタイヤと違って、左右のモーターを逆向きに回すとその場でくるっと回転できます。元記事には「直進=左右とも正転」「左回転=左反転・右正転」みたいな動作表がきれいにまとまっていて、戦車みたいな動きを2つのモーターの正転・反転・減速の組み合わせで作っているのがよく分かります。
操縦はWiiリモコン:ボタン+傾き
操作は、Wiiリモコンの十字ボタンで前後左右、さらにリモコンを横持ちしたときの傾き(pitch)を左右の曲がり具合に割り当てています。傾けた方向のモーターを減速させることで、なめらかにカーブする仕組み。map() で傾き角度を0〜255のモーター出力に変換して analogWrite() で流す、という素直なコードです。ゲームのコントローラーを自作ロボの操縦桿に転用する発想、今見てもワクワクします。
最後の落とし穴:シャフトがLEGOに合わない
地味に効くのがこれ。モーターのギヤボックスから出ているシャフトの太さが、LEGOのキャタピラ用ギヤの軸の太さと全然合わない。著者さんの解決策は「ホットボンドで穴を埋める」か「ミニ四駆のピニオンギヤを削り出す」。完成間際でこういう物理的な"合わない"に阻まれるの、モノづくりの宿命ですよね。ちなみに車体の LEGOのキャタピラは「お好きなように組み立ててください」とのことで、そこは自由です。
2026年の私からのツッコミ:ピンの取り合いは、もう起きない
この回のヤマ場だった「PWMピンが足りない問題」、2026年だとそもそも発生しません。たとえば ESP32 は PWM(LEDC)を大量のチャンネルで自由に割り当てられるうえ、Bluetoothも内蔵。第3回の USB Host Shield も、この回のピン節約パズルも、まるごと不要になります。制約が消えると、あの知恵比べの楽しさも消えるのは、ちょっとだけ寂しいですけどね。
2026年の私が同じことをやるなら
私なら ESP32 に、モータードライバは TA7291P ではなく TB6612FNG(小型で効率がよく、2モーターを1枚で駆動できる定番)を組み合わせます。操縦は市販のBLEゲームパッドをペアリングするだけ。ピンの取り合いも、Wiiリモコン接続の外科手術も無しで、同じキャタピラ戦車が作れます。とはいえ、TA7291P も東芝製チップの現物がまだ手に入るので、あえて2015年構成をなぞって"ピンパズル"を体験してみるのも、勉強としてはすごくアリだと思います。
まとめ
4回にわたる「Wiiリモコン+Arduino+LEGOでラジコン」、これにて完成です。材料選定 → モーター制御 → 無線化 → 全部合体、という積み上げの最終回は、限られたピンをやりくりする知恵と、シャフトが合わない現実との格闘と、「コード今書いた、未テスト」の潔さが全部詰まっていました。道具は進化して制約は減ったけれど、"あるものでどう成立させるか"を考える楽しさは、11年経っても電子工作の一番おいしいところだと思います。私も、走るやつ、作りたくなってきました。
関連アイテム
- Arduino UNO R4 Minima(Amazonで確認)
- ELEGOO Arduino用UNO R3スターターキット(Amazonで確認)
- ESP32&Arduino 電子工作 プログラミング入門(Amazonで確認)