ブレッドボードで動くところまでは、いまも同じ
手順は、はんだ付けの前にブレッドボードで仮組みして動作確認するところから始まります。仮組みの時点ではヘッダピンは要りません。組み終わったらUSBシリアル変換モジュールからPCにつないで、Arduino IDEからスケッチを書き込む。指定する機種は、前回ブートローダーを焼いたときと同じものです。
そして動作確認は「Lチカ」。サンプルスケッチのBlinkを動かして、D13のLEDが点滅すれば成功です。11年経っても、ここだけは1ミリも変わっていません。新しい言語も新しいボードも出ましたが、最初に光らせるのはいまもLEDです。
ひとつだけ補足しておくと、自作機にはArduino UNOのような基板上のLEDがありません。点滅を見たいなら、D13に自分でLEDと抵抗を挿しておく必要があります。「基板に最初から載っているもの」が何ひとつ無い、というのが素の石から組むということでした。
RXとTXは、そういうもの
配線の説明で、おっさんはさらっとこう書きます。ATmega328pのRXをモジュールのTXに、TXをRXに繋ぐ。「RX-TXとはそういうものです」。理由の説明はありません。受信と送信なので当然クロスする、という話ですが、この一行の突き放し方が好きです。
もうひとつ実践的な工夫が書いてあります。モジュールの6pin GNDがATmega328pの1pin RESET側に来る向きでヘッダピンに配線すると、固定抵抗やコンデンサの配置を使って線の交錯を避けられる。図では赤い線が基板の裏面、緑と部品が表面です。部品の位置は回路図だけでは決まらなくて、裏の配線が交差しないかどうかで決まる。これは実際に作った人しか書けない順番だと思いました。
だからこそ、USBシリアル変換モジュールはケーブル付きではなくピンソケットタイプを選べ、とおっさんは繰り返します。基板にピンヘッダを立てておけば、モジュールをそのまま挿せるからです。
時代差がひとつ。2015年の記事は当たり前のように「FTDI USBシリアル変換モジュール」と書きますが、いまFTDIと書いてあっても中身がFTDIとは限りません。2014年に公式ドライバが偽造チップを使えなくする挙動を入れて騒ぎになった件(いわゆるFTDIgate)のあと、安価なモジュールの主流はCH340やCP2102に移りました。2026年に部品を探すと、出てくるのはほぼこちらです。
配線はリード線じゃなくて、部品の脚
ユニバーサル基板にはんだ付けするときの注意として、3つ挙がっています。どれも、道具ではなく手つきの話です。
- 配線は部品の脚を使う。固定抵抗などの脚を基板の裏で曲げながら、他の部品へ繋いでいく。できるだけリード線を使わないほうがすっきりする
- 両端と曲がり角だけはんだ付けする。直線部分は付けない。「ハンダがもったいないしブリッジしやすくなるので」
- 隣同士の部品はハンダブリッジで繋ぐ。すぐ隣が接続先なら、わざとブリッジさせる。脚を曲げると弓型になって不細工だから
最後の理由が「不細工だから」なのが良いです。ブリッジは普通「やってしまう失敗」の側にある言葉で、それを狙って使うと宣言している。失敗と手法の境目は、見た目で決まることもあるらしい。
はんだ付けが終わってから、基板を割る
そして冒頭の話です。ユニバーサル基板の不要な部分を落とす手順は、こう書かれています。
- 表面にカッターで一直線に切れ込みを入れる(穴と穴の間を順に結んでいけばOK)
- 切れ込みを入れた直線に定規を当てて、ペンチで挟む
- 定規の側から見て谷折りにへし折る
そして締めがこれです。「もっと上手に割れる方法をご存知の方は教えてください」。手順を全部書いたあとに、自分でも納得していないと明かす。この一文があるせいで、記事全体がだいぶ信用できるものに見えます。
2026年の答えがあるとすれば、割らなくていい形で基板を作れるようになったことだと思います。基板製造サービスに発注すれば、2層基板が5枚で数ドルから。JLCPCBはいま「From $2.00 / 5 pcs」、製造24時間と出しています。設計どおりの外形で、穴の位置も決まった状態で届きます。
ただし送料と待ち時間が乗ります。「今日のうちに動かしたい」にだけは、ユニバーサル基板がまだ勝ちます。カッターとペンチで足りるので。
20pin AVccと22pin GNDは、やらなくても動く
配線のポイントとして、22pin GNDを8pin GNDに、20pin AVccを7pin Vccにショートさせるのが推奨されている、という話が出てきます。ただし目的はノイズ対策なので、モーター制御のようにノイズが出るケース以外はやらなくても一応は動作すると書いてあります。
厄介なのは配線で、7pin-20pinと8pin-22pinの結線が互いに交差してしまう。どちらか一方をチップの外側へ迂回させるか、被膜付きのジャンパー線を飛ばすことになります。
「やらなくても一応は動作します」と書ける人は、たぶんやったうえで言っています。省略していい手順を省略していいと言うには、省略しなかった回が要る。チュートリアルとの違いはここに出る気がします。
2026年の私が同じことをやるなら
素の石から組む理由は、いまもあります。安い、小さい、5Vでそのまま動く、DIPなのでブレッドボードに挿せる、資料が11年分たまっている。ATmega328P-PUは2026年現在で1,129円です。
一方で、この記事の山場だったところがまるごと消える選択肢も増えました。RP2350-ZeroやESP32の開発ボードはUSBが直結なので、USBシリアル変換モジュールも、RXとTXのクロスも、6ピンのヘッダピンも要りません。この記事の半分がなくなります。ATmega328Pのまま完成品を使いたいならArduino UNO R4 Minima(4,150円)という手もありますが、こちらは中身がRenesasのRA4M1でAVRではないので、今回の話はそのままでは引き継げません。
今回の回で新しく要る部品は、このあたりです。いずれも2026年9月時点で在庫を確認しています。
- ユニバーサル基板(ベークライト片面 2.54mmピッチ 5×7cm 10枚) — 割る前提なら、枚数があるほうが気楽です
- ピンヘッダ(40ピン 2.54mm オス 10本)(229円) — 元記事のとおり6・5・4・14ピンに折って使います
- CP2102 USBシリアル変換モジュール(870円) — FTDIの代わりに買うのは、いまはこの系統です
- 16MHz水晶振動子(720円)、22pFセラミックコンデンサ(750円)、10kΩ抵抗(716円) — 外部クロック版を作る場合
- ELEGOOのUNO R3スターターキット(5,099円) — ブレッドボード・ジャンパー・LED・抵抗をまとめて用意したいとき
元記事のMAX3521eは、たぶんMAX3421E
記事の最後に、この先の構想が書いてあります。「いずれここに MAX3521e という USB ホストコントローラーを載せて USB Host Shield 内蔵にしたり、モータードライバも内蔵して Wii リモコンラジコンモジュールを作れないかと考えています」。
探しても、MAX3521eという型番は見つかりませんでした。USB Host Shieldに使われているUSBホストコントローラはMAX3421Eです。2と4が入れ替わっただけの打ち間違いだと思います。11年前の記事の型番を1文字ずつ確かめる作業をしているの、たぶん私だけです。
そのMAX3421Eのほうは2026年も生きていました。Arduino純正のUSB Host Shieldは公式ドキュメントで「retired」扱いになりましたが、チップ自体は現役で、AdafruitのUSB Host FeatherWing(2026年7月に小型版チップへ基板を更新)やSparkFunのUSB-C Host Shieldとして売られています。純正のボードは引退して、載っていた石だけが残った。
Wiiリモコンでラジコンを動かすほうは、いまならESP32のBLEでゲームパッドを繋ぐのが早いと思います。ただ、それはもう「互換機を自作する」話ではなくなります。ちなみにこの構想、11年経ってもまだ紹介されていません。「設計できたらそのうち紹介します」で終わった記事を、11年後に他人が読んで続きを探している。個人ブログの時間の流れ方として、わりと正しい気がします。
今回の用語メモ
- ユニバーサル基板:2.54mm間隔で穴が並んだだけの基板。部品を好きな位置に挿して、裏で自分で配線します。専用の基板を作らずに1台だけ組むときの定番です
- ピンヘッダ/ピンソケット:基板同士を挿して繋ぐための、櫛のような部品。オス(ピン)がヘッダ、メス(穴)がソケットです。必要な数で折って使える製品が多いです
- USB-シリアル変換:PCのUSBと、マイコンのシリアル通信(RX/TX)を橋渡しするモジュール。FTDI・CH340・CP2102などのチップが使われます
- AVcc:ATmega328pのアナログ回路用の電源ピン。デジタル用のVccと分けてあり、ノイズを避けたいときは両方を繋いだうえで対策します
- ハンダブリッジ:隣り合うランドがはんだで繋がってしまう状態。普通は失敗ですが、繋ぎたい相手が隣にいるときは意図的に使います
関連アイテム
- Arduino UNO R4 Minima(Amazonで確認)
- ELEGOO Arduino用UNO R3スターターキット(Amazonで確認)
- ESP32&Arduino 電子工作 プログラミング入門(Amazonで確認)
0 件のコメント:
コメントを投稿