Arduinoを作るのにArduinoが要る
元記事にもそのまま「Arduino を作るのに Arduino が必要という罠」と書いてありました。理由はブートローダーです。買ってきたばかりの ATmega328P は、Arduino IDE から送られてくるスケッチを自分に書き込む方法をまだ知りません。その「受け取り係」を最初に一度だけ焼き込む作業に、既製の Arduino UNO を書き込み機として使うわけです。
逃げ道も紹介されていました。ブートローダーを書き込み済みのチップを買えば UNO は要りません。ただし内部クロック用の設定で焼かれているので、外部クロックにしたいなら結局自分で上書きすることになります。……最初の1回のためだけに完成品を買う構図、なかなか味わい深いです。
もうひとつ必須なのが FT232RL のUSBシリアル変換モジュール。自作機には USB コネクタを載せないので、パソコンとチップのあいだをこれが取り持ちます。元記事には「配線を間違えると逆電圧が掛かって速攻で壊れる」「頻繁に壊すので出来るだけ安いものを選ぶ」と書かれていて、経験に裏打ちされた諦めを感じました。
45mm × 35mm という説得力
完成サイズは 45mm × 35mm。Arduino UNO が 140mm × 90mm なので、元記事は「1/3 程度」と表現しています。ただ、これは縦横それぞれの比の話で、面積で見ると約8分の1です。机の上での占有感はもっと劇的に変わるはず。
その代わり失うものもはっきり書かれています。USB 端子も外部電源端子もなく、市販のシールドも挿さらない。UNO の基板の大部分は「使いやすさ」のために存在していて、それを全部降ろした結果が 1/8 ということになります。安いから小さいのではなく、諦めたぶんだけ小さい。
本体より、道具のほうが高い
部品表が「一式だけ必要な道具」と「1台分の材料」に分けてあるのが親切でした。1台目はどうしても道具代が乗るけれど、2台目からは材料費だけで済む、という構造が見えます。
道具側は、上記の書き込み用 UNO と FT232RL に加えて、温度調節付きのはんだごてセットと ブレッドボード、それにブートローダー書き込み時の 10μF 電解コンデンサ。この電解コンデンサについては「必要なはずなのですが、私は無しでも書けました。真似して壊れても知りません」と添えられていて、ここがいちばん笑いました。
ブレッドボードの使い方も面白くて、85mm の小さいものでも ATmega328P を2個横に並べられるから、片方を書き込み機・片方を書き込み対象にすれば、それだけで小型のブートローダー書き込み機になるとのこと。道具を増やさずに役割を分ける発想が上手いです。
材料側は ユニバーサル基板、ピンヘッダ、外部クロックなら 16MHz 水晶振動子、動作確認用の 発光ダイオード、0.1μF セラミックコンデンサを2個、外部クロック用の 22pF セラミックコンデンサを2個、そして 10kΩ と 1kΩ の抵抗。1台分の部品はどれも数十円の世界です。
注文時の警告もありました。ATmega328P には脚付きの -PU と表面実装用の -AU があって、間違えるとはんだ付けでひどい目に逢う。1文字違いで難易度が跳ね上がる部品名、電子工作にはこういうのが多すぎます。
2026年の私が同じことをやるなら
まず、11年前の部品表がほぼそのまま生きていたことに驚きました。FT232RL のモジュールも、ATmega328P-PU も、16MHz の水晶も、いまも普通に買えます。マイコンの世代が何周かしても、周辺の地味な部品は入れ替わらないんですね。
ひとつだけ状況が変わっていたのが 22pF のセラミックコンデンサです。元記事は「Amazon では手に入らないようなので秋月電子通商さんで」と書いていましたが、2026年現在は 2pF〜100nF を30種類まとめた詰め合わせが普通に流通していて、その中に22pFも入っています。抵抗もコンデンサも「100個入り」「300個入り」のセット売りが主流になった結果、少量では買えないという問題が別の形で解決されていました。
そして元記事がいちばん嘆いていた送料の話。「チマチマと注文していたら宅配業者への献金状態」という表現が的確すぎるのですが、これは2026年もそのままです。20本42円の抵抗に送料230円が乗る構図は変わっていません。まとめ買いか実店舗、という結論も同じでした。
もし目的が「安く小さいマイコン基板が欲しい」だけなら、いまは USB もクロックも載った完成品のボードを買うほうが早いです。ただ、この部品表を1行ずつ潰していく作業でしか手に入らないものもあります。2015年は部品名を1つずつ検索して規格を確かめる必要がありました。いまは型番を貼れば AI が互換品まで並べてくれます。それでも、-PU と -AU を間違えて泣くのは今も昔も自分です。
買い物リストは設計図でもある
この回、作業としては何も進んでいません。部品を並べただけです。それでも読み応えがあるのは、部品表が設計の要約になっているからだと思いました。水晶と22pFが「外部クロックの場合だけ」と注記されている時点で、前回の選択がそのまま買い物に反映されている。
あと、横浜の石川町に「エジソンプラザ」、多摩の分倍河原に「エステーシー府中」という部品屋さんが紹介されていて、「なかなか良い味を出しておられる」と書かれていました。ここだけ急に旅行記みたいな温度になるのが良かったです。次回はようやく作り始めるそうなので、私も付いていきます。
今回の用語メモ
- ブートローダー:マイコンにあらかじめ書き込んでおく小さなプログラム。パソコンから送られてきたスケッチを受け取って、自分自身に書き込む役目を持ちます。これが無いチップは、まず書き込み機で焼いてもらう必要があります。
- USBシリアル変換:パソコンのUSBと、マイコンが話す単純な信号(シリアル通信)を橋渡しする部品です。自作機はUSB端子を持たないので、これを外付けします。
- -PU / -AU:同じATmega328Pでもパッケージ違いを示す記号。-PUは脚が生えたDIPタイプで手はんだ向き、-AUは表面実装用で、初心者が扱うにはかなり厳しい大きさです。
- ユニバーサル基板:穴が等間隔に並んだ汎用の基板。専用の基板を発注しなくても、部品を挿してはんだ付けすれば回路が作れます。
- パスコン(バイパスコンデンサ):電源にぶら下げて、電圧の細かい揺れを吸収させる小さなコンデンサ。今回の0.1μF×2がこれにあたります。無くても動くことはありますが、動作が不安定になります。
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